2022年、春が来ました
去年の春に続いて、今年の3月初旬も梅見を兼ねて京都観光に行きました。
夏秋冬も出かけたり写真を撮ったりはしてきましたが、ブログにまとめるのが面倒くさく……今回は、カメラを新調して1年経つしと重い腰をあげて記事化しました。
主な行き先は、旧三井家下鴨別邸~京都府立植物園~駒井家住宅で、合間のカフェ・飲食店も入ってます。
こちらは、カフェWIFE&HUSBAND。
写真はフィルムシミュレーションのASTIA/ソフトで、補正してます。しかし全体を見ると色調が整ってないな…難しい……。
それでは、1つ目のスポットです。
旧三井家下鴨別邸
今も巨大企業として存在する三井家が、大正時代に建てて戦前まで所有していたお屋敷です。
でかい! 古い! 威厳がある!
左の建物は玄関棟(入り口)で、右の建物が主屋、さらに向こうには江戸時代に建てられたお茶室があります。鬼瓦はすべて三井家の四ツ目結になっている。
当時は、となりの敷地に三井家の祖先を祀る神社があり、この屋敷はお参りや法事の際に一族や重役が集まるために作られたそうです。うーん、感覚のスケールが違うぜ。
戦後の財閥解体により、神社もこの屋敷も国の所有になりました。神社の敷地には京都家庭裁判所は建てられ、この屋敷は裁判所所長舎になっていたそうですが、現在は京都市の管理で一般公開を行っています。
歴史や価値は三井グループのサイトが詳しい。
庭の池の向こうからの写真。主屋と茶室です。
一番上に乗っかっている望楼(3階)のみ予約が必要、別料金ということで上がってきました。
しかし、部屋自体は簡素なので写真は省略。ガイドさんの説明は丁寧で、雨戸の開け締めも見せていただいた。この主屋は、木屋町にあった屋敷を移築したもので、もともとは明治時代の建築です。移築当時は、望楼から五山の送り火がいくつも見られたそうです。
同じ屋敷の中に江戸・明治・大正が混在しているのが特徴なんですね。この写真は玄関棟の広間で、大正時代に建築。当時から椅子席だったので、天井と窓が高い。廊下の絨毯など、全体的には洋風が入った和風なんだよな。
主屋の座敷、八畳+六畳。ガラスの引き戸も明治時代から保存されているので、ガラスが現在よりでこぼこしています。
平面図が展示されているのうれしい!中3階があったり、階段がお手伝いさん用と主人たち用でわかれてる。
座敷の床の間には、桃の節句の飾りがありました。
座敷からの眺め。苔庭がきれいだな。左のお茶室はレンタル可能で、この日もお茶会をやっていました。
主屋用の水屋。私は一応、茶道経験者なので、お茶道具が置かれてるとうれしいのだ。
2階の広間。ベランダの柵のかたちが格好良い。
私はここで説明を聞くまで、三井家の屋号が越後屋であることを知りませんでした。越後屋といえば、江戸時代ジョークの「お主も悪よのう、越後屋」のこと? そして、三井=越後屋ってことは百貨店三越は、三井家のものだった…?
別々の知識がひとつにつながった瞬間だった。……そうですね、たぶん社会常識です。
でかい広いも大事なんですが、こういう、洗面所の窓の細工にマネーとこだわりを感じました。
カフェも兼ねているので、抹茶やお菓子が広間や庭のベンチで食べられます。見学プランには京都の料亭の朝食や昼食を食べられるのもあって、予約時は迷いました。
続いて、北向きのバスで北大路通りに向かいます。
カフェWIFE&HUSDBUND
おしゃれカフェです! 2店目のDAUGHTER/SONは行ったことがあるのですが、こちらは初めて。
外観からしてかわいい~!!!ピクニックプランというのがありまして、椅子やかごなどをレンタルすれば、加茂川沿いでコーヒーや軽食を楽しめる。この日も何組かがにこにこと河川敷に向かってました。私はイートインです。
店内もかわいい~!! 小さい空間にぎゅっと素敵が詰まっているよ。コーヒー豆もおいしいんですよ。
チョコレートのテリーヌとカフェオレ。テリーヌは、フォークが入りにくいほどこってりで、お酒に漬けたフルーツとの組み合わせが濃厚だった。
北大路大橋から北向きの写真。まだ冬枯れで寒々しいな……鴨川のポテンシャルはこんなもんじゃないのに。あ、ここでいう鴨川は、支流の賀茂川・高野川も含みます。
鴨川は北に行くほど河川敷が広くなって、川に近付ける。河川敷ではピクニックから太極拳教室から犬の散歩までできるし、春には大学の新歓コンパが行われ、酔った学生が飛び込んだりする。これからも柵を作ったりこれ以上の護岸工事をせずに、地面と川がひと続きでいてほしい。
その一方で、橋の下にはホームレスの家がありました。私の学生時代の話です。あの人達は、どこに行かされたのかなとも思います。
カフェ ヨージク
お昼はロシア料理です。
2月24日にロシアがウクライナに攻めこんで、日々、多くの被害が出ています。世界の治安が脅かされています。しかし、ロシア政府がやった戦争犯罪と食事などの文化は別です。
京都のロシア・ウクライナ料理屋は、祇園のキエフが有名です。私は行ったことがあるので、他にロシア料理屋がないかなと調べてみたら、ちょうど目的地の植物園近くに発見したのでした。
お店が入ってるビルの入口。階段状でおしゃれだ。
店内には、春の訪れを祝うМасленица(マースレーニッツァ)の飾りがありました。奥のピンクの顔が太陽に見立てられている。ロシア関係の本も置いてある。
私は定番のボルシチとピロシキを注文。ビーツの赤色がしっかりついてる。サワークリームがおいしかった。ピロシキはデザート系のりんごとはちみつにしました。
ロシア料理は、近い地域のウクライナ、ジョージアとまとめられやすいそうで、こちらもロシア以外の料理があったものの、それぞれ国名や食べ方、由来などが丁寧にメニューに書いてあった。ウズベキスタン料理のラグマン(うどん)もありました。
京都府立植物園
カフェの前の北山通の門から、京都府立植物園に入りました。自分の行動範囲にないので、来たのは中高時代の校外学習的なイベント以来ではないか。
目的は梅林です!
今年は春が遅く、この日は咲いてない木が4割、咲いている木も5分咲きほど。うわー華やかーというインパクトはなかったけど、梅は花が密集してないし花落ちがないので、一本一本をじっくり見ていけました。
白梅でも、種類によって花や枝のかたちが違う。
全体はこんなです。梅の長所は、種類と色数が多いことと、枝が低くて花も近いこと。集まる人も少ないし。
だんだん曇ってきたので、紅色が映える。
こんなもんです。
梅林を出て、道なりに歩くと「早春の草花展~すぐそばの春~」をやっていました。
細長いハウスの中で、春の花が咲き乱れてる。
菜の花やチューリップで色とりどり。園芸詳しくないけど、咲きごろをあわせるだけで大変そうだ。枯れた花がぜんぜんなかったので、スタッフがこまめに摘まれてるんでしょうね。手間がすごい。
4月~5月が見頃の牡丹が咲いてました。お正月合わせで栽培されてきた伝統があって、冬牡丹と呼ばれているそうです。
しかし植物園、脳内イメージよりずっと広い。木の繁り方が悠々としていて、道も広い。そして、葉っぱや枝のごみもぜんぜん落ちてない。手間をかけて大事にされている場所ですよ。
この日は時間がなくて、梅林と早春の草花展だけで終わったので、また季節に合わせて来たいものです。
さて現在、この京都府立植物園エリアに新たな計画が出ています。
ざっくり書くと、植物園のバックヤード等を減らして商業施設を建築しようというもので、私は反対です。
公共の場所が商業主義に染まるというの、図書館の民営化やら動物園の独立行政法人化やら全国的に進んでいますが、それは公共の役目を果たしていませんし、なんのために税金を収めているのかわからない。
この手の活用をすると、地方の魅力=凝ったスタバが入ることになってる感じで、それは魅力じゃなく均一化だと思うし。
以下のサイトでは、計画見直しのための署名活動が行われています。
4月10日には京都府知事選も行われますね。
別料金の温室。想像の5倍でかかった。次は入りたいぞ。
北大路通からまたバスに乗って、次の目的地に向かう。京都市バスの1日乗車券を使ってます。去年の秋から700円になって、4回乗らないと元が取れなくなったね…。
駒井家住宅
遺伝学博士の駒井卓・静江夫妻が暮らしていたモダン建築です。1927年に建てられて、現在は日本ナショナルトラストが管理・公開をしています。予約して行きました。
特徴のひとつは、ヴォーリズ建築です。
出た、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ! 京都や滋賀の洋風建築で有名な建築士です。静江夫人がヴォーリズの奥さん、一柳満喜子さんと同じ神戸女学院大学だったご縁で設計を依頼されたそうです。
私もヴォーリズ建築を見るのは初めてだ。
北白川の疎水沿いのお宅です。おうち訪問の気分ですね。表札が出てるし門もあるし。
庭からの全体像です。赤い瓦屋根で、アメリカで流行していたスパニッシュ様式だとか。壁はうっすらとピンクがかってます。天気が悪くて、くすんだ色になっちゃってる。
食堂とリビングが続き部屋になっています。
ソファがアルコーブ(くぼみ)に収まってるのが素敵。外観では煙突がありますが、駒井博士の意向で暖炉は設けなかったそうです。ピアノ等の家具も当時のまま。
突きあたりのサンルーム。窓が大きい。
キッチンは一部入れ替えたのみで、今も現役です。手前の白い丸が置かれた台は、当時のもの。奥の柱の愛宕山の火の用心のお札は、京都では一般的なので、当時もかかってたんじゃないでしょうか。
家具はだいたい家に合わせて作られたオリジナルだそうで、さすが…と思ったが、当時はニトリなんかなかったものな。
この食器棚もキッチンのために作られまして、見どころは取っ手です。
ドアの取っ手がクリスタル! ヴォーリズ建築の特徴ですね。食器棚もオリジナルだからつけたのでしょう。
これはキッチンの別の戸棚の取っ手。ちっさくてかわいい。
サンルームの外のドアも…
紫色のクリスタル! お客さんの目にふれるところが紫で、家人だけの取っ手は透明というルールだそうです。
和洋折衷なので、1階には和室もあります。障子と窓が二重なのは、外から見たときに洋風の見た目を保つためだそうです。外側の窓枠は洋風になってる。
玄関脇の引き出し、いいよね。
階段を上がって2階へ。
駒井博士の書斎です。蔵書をできるだけ戻しているそうで、退色防止のためにブライドが引かれている。
バルコニーも広々。当初は柵だけだったのが、竣工後にガラス張りになったそうです。五山の送り火が見られるポジション。旧三井家別邸と同じく、京都の良いおうちのウリですねえ。
2階の上には屋根裏部屋があって、この歯車で階段が降りてくる仕組みです。説明のとき、「映画で見ました!」て言っちゃったよ。『ヘレディタリー』とかね。ホラージャンルでさらに怖く使われるやつですね。
そうそう、午前中の旧三井別邸も駒井家住宅も、説明してくれるスタッフさんが丁寧でわかりやすくて楽しかったです。
中庭には、温室もありました。駒井博士がイギリスでダーウィンの家を見て、いいなと思って建てたそうです。
内部はサンルームみたいになってます。
歴史ある建物・建築はどれも素敵だけど、私は美術館や銀行よりも、人が住んでた家がより好きですね。駒井家住宅は生活の動線もイメージしやすいし…と思ってたら、ここをモデルにして建てたおうちがあるそうです。すごい。
京都は明治期以降に作られたモダン建築が多いそうで、昨年は京都市京セラ美術館で一挙にまとめた展示も行われました。
また別のモダン建築を見に行きたい。
駒井家住宅の前の北白川疎水。写真は寒々しいけど、街路樹が桜なので咲いたらきれいでしょう。
北白川は高級住宅地でもあるので、バス停まで歩く道ではおうちチェックをやっていた。大きいよりも、手が込んだお宅が多い印象です。
なんか洋風の塔がある!と近付いたら、京大の東アジア人文情報学研究センターだった。これもモダン建築! スパニッシュ・ロマネスク様式だそうで、内部写真ではアーチ状の天井やステンドグラスが素敵だ。一般向けの公開、やりませんか?
次なる目的地へ。今出川通りからバスに乗って、西へ向かいます。
虎屋菓寮
最後のスポットです。活動範囲じゃないのと混んでるのと閉店時間が早いので、気合を入れないと来れないお店なのだ。
広い面積にゆったりと平屋建て。お庭もあります。立地が御所のすぐ横なのは、歴史ある和菓子屋のステータスだと思う。
このお庭を見られるテラス席。
生菓子が食べたかったのに、直前で売り切れでした。しくしく…悲しい…。かわりに季節の羊羹と抹茶です。紅梅の橋という名前で、真ん中の茶色い部分が橋に見立てられている。春に向かって橋をかけているようにも見える。
寅年=とらやの年!
すでに、これ以上悪いことが起こりませんようにとお願いする気持ちですが、今後もこういう息継ぎをしながら時間と社会を泳いでいきたいものです。