4日目その2 ブハラ:巨大なマドラサやモスク、そしてスザニ購入

:昼食のレストランを出ると、青空が曇り空に変わっていた。東側から観光を始める。

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 ナディール・ディヴァンベギ・ハナカ。シルクロードを旅するイスラム教信者のための巡礼宿で、今は博物館になっている。有料なので入らなかった。

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側面の木の扉。ヒヴァとは材質や彫刻が違っている。

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その東側にあるのがラビハウズ。ガイドブックには必ず、ここを起点に観光しろと載っている。人工池ですね。ハウズは池という意味。1620年に作られて地元民の憩いの場にもなっている。

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このラクダたちの前は写真スポットだった。夜はライトアップされている。

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釣りをしている人々がいた。OKなんだ?&魚いるんだ?

ここで初めて日本人観光客に遭遇する。日本語が聞こえなくても、出で立ちで判別できるものですね。ご老人中心のツアー客で、首から翻訳機を下げてらっしゃった。一緒にガイドさんの説明聞いちゃったよ。個人旅行らしいカップルも見かけた。ここで「やっぱり日本人、ウズベキスタン来てるんじゃん!」と思った私だったが、ブハラ以外では日本人観光客にはちっとも出会わなかった。

 池の東側にあるのが、有名なナディール・ディヴァンべギ・マドラサだ。

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でかい。全景を見たほうがデカさがわかるのだが、うしろに下がるとラビハウズの木がかぶってしまうので、これが精一杯。

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イーワーンの左の柱から向こう側。ヒヴァではタイルの上に模様が描かれていたが、ブハラはモザイクタイルで、アラビア語部分も形の違うタイルの集合体だ。より手間がかかる。f:id:yuzushima:20190715021631j:plain

しかし、このマドラサの一番の特徴はてっぺんの装飾である。左右に白い鹿をつかんだ鳳凰を配し、人の顔を太陽として描いている。イスラム教は偶像崇拝及び神のみが作り出せる生命を描くことを禁じているので、この絵は教義に反している。もともとは大臣が巡礼宿にするつもりで建てていたのだが、王が「素晴らしいマドラサ」と褒めたので、怒りを避けるためにマドラサに変えたらしい。1622年の建築だ。

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入り口はささやかだ。入場無料。

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中庭にはベンチが並べられ、周りの部屋がお土産物屋になっている。

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ヒヴァで見かけたお土産もそうじゃないお土産もある。

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金属細工はブハラで初めて見たと思う。特にコウノトリのかたちのハサミは有名なのだけど、あまり惹かれず買わなかった。右の写真は金属加工の実演販売。ピアスが七宝焼のような色味で欲しかったが、店員さんがいなくてあきらめました。ゆるいね。

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右下の人間との対比で大きさが伝わるでしょうか。アーチの模様もひとつひとつ違っている。

続いて、北のクカリダシュ・マドラサに行く。

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外観は、ナディール・ディヴァンべギ・マドラサより簡素だが、1568年建立と歴史は古い。

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イーワーンの内部の細工が凝っていた。焼成レンガの色を変えるだけで雰囲気が変わるし、図柄が星のようだ。

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中庭はタイルまでは復元していない。

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これは一番奥のドームの造作。ブハラでは、ヒヴァでは見かけなかったムカルナス装飾が出てきた。この写真だと左右の角の白いだんだんの部分だ。四角い土台を丸いドーム型にするための刻みで、鍾乳石や蜂の巣に喩えられる。
この中庭の土産物屋で、ザクロが刺繍されたポーチを買う。

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1万5千スム(190円)。店のおばあさんの手作りだったので、右対称じゃないところもご愛嬌だ。刺繍は裏側にも入っている。

土産物屋ではスザニを買うつもりで価格調査をしているのだが、これが難しい。

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これは別のお店のスザニコーナー。どこの店もこんな具合に大量に商品が積まれている。うおーぜんぶ素敵だー、ぜんぶほしいぞー。でも、うちにはクッションがないし、あったとしても何枚もクッションカバーを買うわけにはいかない。クッションカバー以外の刺繍商品もあるので、何にこだわるかになってくる。模様ひとつとっても種類が多すぎるから、他の店に同じ柄があるとは限らない。ちなみに、ザクロはスザニの代表的な意匠で、子孫繁栄などの意味がある。
この店では日本人団体客と一緒になったので、全面に刺繍があるストールの価格を聞いてみたら「8000円」と言われた。うん、ボラれてるね、この刺繍は機械っぽいしね。適正価格と適正な商品の選び方がわからない。

続いて、ラビハウズの西に向かう。

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マコギ・マッタリ・モスク。見た目のとおり非常に古く、同じ場所で用途を変えて建て直されてきた。6世紀までは仏教寺院、その後バザールの店、アラブ支配後はモスク。ロシア支配後は土の中に埋もれていたが1936年にロシアの考古学者によって発見された。マコギは「土の中」という意味だ。時代別に三層に分かれていて細工も違うそうだが、私は見分けがつかなかった。

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復元していないのかタイルの色は消えているが、タイルそのものの精巧さがわかる。内部は有料の絨毯博物館で入らなかった。

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ブハラでは土産物に絨毯が登場するし、こういう織物の飾りも売っている。スザニよりお値段は張るらしい。
ここで、地元の女性に日本語で話しかけられた。おお、レポで読んだやつだ。ウズベキスタン人は旅人にフレンドリーだから、観光客に話しかけてきてガイドをしてくれたり自宅での食事に招待してくれたりがあるらしい。怪しい案件も本当に親切な人もいらっしゃるらしく判断が難しい。彼女も「旅行者から教わって話せるようになった」「日本のどこから来たの?」「この店はスパイスを売っていて」などと話しかけてくる。私も質問に答えたり「日本語お上手ですね」と相槌をうつ。立ち話を拒絶する理由はないが、「じゃあね、ありがとう」と離れようとしたら「お友達のように一緒に話しながら観光しない?」と言われた。うーん、彼女の発言が真意であっても私はご遠慮したいぞ。「ひとりが好きなので」ときっぱりお断りする。「Oh」とあからさまにびっくりされましたよ。親切心なら申し訳なかったが、相手が日本人でも似た答えをしたんじゃないかな…。


さらに西に進むとタキ・バザールに行き当たる。つまり、土産物屋商店街です。ヒヴァと同じく、見ているだけで楽しいよ~と写真を撮っていた。

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入り口はいくつかあります。

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回廊→丸天井の交差点→回廊という構造で、丸天井には明り取りの窓がある。

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左の写真のおじさんは、団体観光客向けに楽器のパフォーマンスをしていた。私もおこぼれにあずかった。うしろにも弦楽器が並んでいる。

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それにしても、スザニである。どれを見ても、細かい、美しい、素敵だ。この写真のはちょっと珍しい模様だ。大きなスザニは何人かで分割して刺繍をしてから繋ぎ合わせたそうで、左の大きなスザニなど九分割されているからその方法じゃないかな。

スザニは、古くは嫁入り道具だった。花嫁自身がベッドカバーや壁掛けなどを作って婚家に持参した。中央アジアが舞台の人気マンガ『乙嫁語り』には、刺繍が大変苦手なパリヤさんという女の子が出てきて不器用さに大いに悩むのだが、裁縫がダメな現代人間的には5回生まれ変わっても作れない自信がある。  ちなみに、ここブハラは作中で主人公アミルさんの嫁ぎ先の近くに設定されている。

乙嫁語り 1巻 (HARTA COMIX)

乙嫁語り 1巻 (HARTA COMIX)

 

 

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いろいろ見ていくうちに、ほしいものの狙いが定まってきた。スザニはクッションカバー以外のザクロの刺繍にする。どこでも売っているので困らないだろう。それと、ヒヴァでも見かけたラクダの毛に刺繍がされたストールだ。こちらは置いてある店が少ないので、見つけるたびに価格を聞いてメモっていった。店員さんは商売のチャンスを逃さない系の対応なので「ごめんね」「考えとく」を繰り返す。お店がいっぱいあるから間違わないようにしないといけない。

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観光需要の高まりで、建築・改装が多かった。これは同じ建物の表と裏です。わざと昔風にしてるのかな。レンガを一個一個積み重ねて隙間にコンクリートを塗っていた。手作業は大変だ。

小さな街なので、適当に歩いていても観光施設にはたどり着く。

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アブドゥールアジス・ハン・マドラサだ。1653年に建てられた。

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ムカルナスが細かい!! 一個一個絵が描いてある!! 金彩が入ると豪華になる!! 他はタイルが剥がれたままだが、ここだけ復元が完璧なのでアピールポイントだ!と頑張ったっぽい。

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内部はこんな感じ。すすけているが、この風情が逆に魅力的だ。赤茶色が使われていて珍しい。

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ここもムカルナスのパワーが強い。必殺技みたいな名前ですよね。

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ここのお土産物屋さんには大きなラピスラズリがあった。こんなにでかいとプラスティックみたいに見える。

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中庭はこんなだ。2階に夏と冬の礼拝堂があるそうだが、入れないのでわからない。

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この北側にあるのが、ウルグベク・マドラサだ。アブドゥールアジス・ハン・マドラサの約200年前、1420年に建てられた。現存するマドラサでは中央アジアで最古になる。

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古い時代なので、タイルの模様もシンプルだ。ムカルナスもない。

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中庭の奥の建物はこんなです。

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ウルグベクは天文学者でもあったので、模様に星が混ざっている。
しかし、どのマドラサもかたちが似ているので、写真の構図が単調になっていく。左右対称・水平に撮るのも難しいし、傾いてるのは縮小の際に補正している…つもり…。

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さらに西に進むと「スザニ ワークショップ」と書かれた店を発見。何か特別なことやってるのかな?と入ってみました。

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若い女性店員が寄ってきて、英語で左の展示の前に案内される。スザニの刺繍糸の染料紹介コーナーでした。玉ねぎ、ザクロ、インディゴと糸ごとに原料を教えてもらう。事前にスザニ情報を読んでいたら、天然染料と化学染料があって見分けられるかなと思っていたのでこの情報はありがたい。続いて、右の写真のマダムのところへ。女性店員さんのおばあさんだそうで、スザニの刺繍実演をしてくれた。大きなサイズはこうやって布を張って縫うそうです。製作途中と完成品を比較できる。説明を聞くうちに、この店で買おうかなと思いはじめる。広いから商品数も多いしね。
クッションカバーサイズのスザニの棚に案内してもらう。価格は、サイズと素材で決まり、布地が絹100%、絹50%木綿50%、木綿100%の順に下がっていく。ここでは絹と木綿で10ドル近く違った。客が私ひとりなのを良いことに、棚を漁って一枚一枚見せてもらい、気に入ったのは値段と素材を聞いていった。

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悩んだあげくに木綿の布地のを12万スム(1500円)で購入。左右対称デザインと天然染料らしい色ムラが気に入った。
このあとも、各地でスザニを見て歩くのだが、日常的に使うと刺繍が痛みそうで使い道が少ないなと購入はこれ一枚で終わった。しかし私はオタクなので、細長いスザニを買って同人誌即売会で机に敷けば良かったですね!!! スザニ買った人のレポートを読んでいても、信用できるお店を見つけられるかがポイントだと思うので、原料や素材の質問は指標のひとつになる。また、サマルカンド近郊のウルグットバザール(水・日のみ)が種類も豊富で安いそうだが、天候不順で行かなかった。

お店を出て人の流れに沿って歩くと、またもや見どころがやってくる。

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カラーン・ミナレットとカラーン・モスクだ。先に作られたのがミナレットで、1127年建立。カラーンはタジク語で「大きい」という意味。高さ46メートルだから、ヒヴァの一番高いミナレット並みだ。砂漠を旅する人々の目印になったが、18~19世紀には死刑場になり袋に詰めた死刑囚を上から投げ落として「死の塔」と呼ばれ……にんげん、えぐい…。内部には入れません。

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本体のカラーン・モスクの巨大さはこんな具合。奥のドームが特徴だ。ここは翌日も来たので、内部の様子はのちの記事にまとめて記す。
この向かいにあるのが、ミル・アラブ・マドラサだ。 

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 1536年建立。ふたつの青いドームが特徴で、宗教弾圧の旧ソ連時代も開校を許されていた数少ない学校である。しかし、建築の際は3000人以上のペルシャ人奴隷を売った資金が使われたそうで……にんげん、えぐい。

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 しかしタイルは美しい。右の壺の絵柄なんかタイルの形がひとつひとつ違っていて気が狂いそうだ。

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内部はこんなです。

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説明書きを読むのが面倒くさいので、天井を撮る。ベージュ~焦げ茶色だけで表情がつけられているところも、青や星が混ざっているのも素敵だ。

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中庭への通路写真がここで終わっているので、入れなかったのでしょう。

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青空が背景だとさらに映える。

写真は明るいが、時刻は18時前だ。雨も降ったり止んだりしていたので、いったん宿に戻る。15分ほどの距離だ。

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途中で水を買ったお店。コンビニに一番近いタイプだけど、個人商店なのかチェーン店なのかはわかららない。食料品は量り売りもある。値札はここでも貼られていない。1000スム(13円)でした。

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夕食は、宿に近いChinarにする。日本人観光客にも評判の良い大きなレストランです。最上階はテラス式で、私は普通の4人席に案内された。混んでいたせいか注文した品がなかなか来なかった。

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サラダの種類の中に「ジャパニーズ・サラダ」や「チャイニーズ・サラダ」があって笑ってしまった。私は食べやすそうな別のにしました……が、これもドレッシングがあわないのか進まなかった。そして、そして、やっと初シャシリクです!! 美味しい! 羊だったか牛だったか忘れたが、挑戦をしぶったわりに好きになれたので、このあとの食事では普通に食べました。しかし、帰ってから見直すと食事量が少なくてびっくりする。まじでお腹が空かなかったんだな。グリーンティーもあわせて、2万7千スム(340円)。

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20時半ごろに戻って就寝。アムレット・ホテルはライトアップの色が優しい。21000歩。